鍵山秀三郎先生の薫陶を受けて
静岡便教会 代表 柿島 由和
主な活動(2020年9月現在)
- トイレ掃除 幼稚園や小中学校で実施、27回、1000名
- 街頭清掃 2017年(平成29)~「ふじクリーンパートナー」、月2回、62回、1730名
- 大震災支援 2011年(平成23)~、2泊3日、生徒、教師、有志ほか、11回、300名
霜に打たれた柿の味
辛苦に耐えた人の味
1989年(平成元)27歳で銀行を辞め、教職に転じて32年、「教員の常識=社会の非常識」「常識と良識ある社会人」にはほど遠い教育界で、筆舌に尽くせぬ屈辱を受けてきました。「教員は辞めたい、しかし教育の仕事は続けたい」の葛藤の中、転職も試みましたがうまくいかず、とうとう定年まで2年…。心が折れそうになるたびに支えられたのが、鍵山相談役、佐藤一斉、西郷隆盛、森信三先生、坂村真民先生などの偉人の言葉でした。
「静岡便教会」を立ち上げる
そんな私ですから、一般社会の方々と求めてお付き合いし、学んだことを生徒に還元するよう心掛けました。以下は、2010年(平成22)11月1日、鍵山相談役ご参加での伊東掃除に学ぶ会(白鳥宏明代表)との共催による「第1回静岡便教会」立ち上げの経緯です。
2003年(平成15)、話し方講座での松井利廣様との出会いが、私の人生を大きく変えました。松井さんは、月刊「致知」や富士掃除に学ぶ会代表世話人大村峰緒様を紹介して下さり、この出会いが便教会立ち上げに繋がりました。
2009年(平成21)8月、愛知県での便教会総会に初参加し、閉会式で「静岡便教会を立ち上げます!」と皆さんの前で宣言してしまいました。覚悟を決めたのです。しかし、自前の道具もない、どのように人を集めるのか、何をしたらよいのかなどわからぬまま、途方に暮れて1年が経ちました。
そこで白鳥代表にお願いしてようやく一歩を踏み出すことができたのです。ホテルで同室の元富士市倫理法人会会長芦澤義信様の「私もお手伝いしますよ」とのお声かけに、どれほど勇気づけられたことか。さらに、小野繁美様(元千葉ロッテのエース小野晋吾投手実父)はじめ、多くの同志の物心両面でのご支援を頂きました。
まずトイレ掃除
第1回大会が終わると、第2回を翌月12月にすんなり開催できました。教え子たちや家庭倫理の会の16名と、私の母校富士南中学校で行いました。よちよち歩きの始まりでしたが、前に進めたことで、安堵感と「よし次も頑張るぞ!」と勇気が湧いてきました。
富士市内の小中学校トイレ掃除のほか、岩松中学校では、生徒会を中心にしたトイレ掃除活動が伝統行事として続けられています。
高校2年の教え子の感想文
植村花菜さんの「トイレの神様」の歌がきっかけで、毎朝昇降口の掃除をしています。父がこの歌を紹介してくれたとき、柿島先生が頭に浮かび、先生が毎朝掃除をしていることを父に話しました。すると父は、「お前もその先生を見習ってやってみれば」と言ったので、私もすることにしました。翌日勇気を出して先生に声を掛けました。卒業まで続けようと決心して…今も続けています。
しばらくして、先生に「一緒にトイレ掃除をしよう!」と誘われびっくりしました。昇降口とは訳が違うと少し不満でしたが、先生の押しに負けて富士南中学校ですることになりました。
行くと知らない人たちばかりで不安でした。お互いに軽く自己紹介し、掃除を始めました。私の担当は男子の大便器で、汚れがこびりついていました。正直、「本当にここ掃除するの?!」と驚きを隠せませんでした。スポンジで水を抜き、ナイロンたわしとサンドメッシュで磨きます。便器に素手を入れることに抵抗がありましたが、30分も磨くと楽しくなってきました。
私のトイレはなかなか手強く、もっと「きれいにしてやろう」と夢中になる自分がいました。ですが、サンドメッシュでも落とせない汚れに出くわし、ヘラをもらいひたすら擦りました。やっと半分汚れが落ちたときには、終了時間が迫っていました。もう終わりか…と思っていたら、柿島先生が時間を延長してくれました。そして、プロ野球選手の息子をもつおじさん(小野繁美様)も手伝ってくれ、また気合い新たに磨きました。少しずつきれいになる便器に感動しました。おじさんは、15年間毎朝ゴミ拾いをしているそうで、私には真似のできないことだと思いました。トイレ掃除をする方は、尊敬できる方々だと感じました。
磨き終えると2時間以上経っていて、ここまで夢中で掃除をしていた自分に驚きました。最後に壁を磨いて掃除終了。改めてきれいになったトイレを見たときは、「あの汚かったトイレが見違えるようにきれいになったんだ!」と清々しい気持ちでいっぱいになりました。
柿島先生が仰っていた、「トイレを磨くことは、心を磨くこと」を体感しました。反省会では、私が一番汚れたトイレをきれいにしたとほめられ、MVPをもらいました。会が終わって、手伝ってくれたおじさんと握手し、「君のことは忘れない。今日はご苦労さま」と声を掛けてくれたときは、すごくうれしかったです。
初めて参加しましたが、この活動は素晴らしいです。素晴らしい方々と出会え、自分の心もきれいにできることを体感しました。
もっと広めて、多くの人にあの清々しさを体感してもらいたいです。人の嫌がることに率先して行動することは大切だと知りました。「トイレの神様」の歌詞の「べっぴんさん」になれるよう、これからも柿島先生と掃除を続けていきたいです。貴重な体験をありがとうございました。
幼稚園保護者から
昨日の便教会は、とてもよい経験をさせて頂きました。1日経ち、わが家ではとても大きな変化がありました。征希が「トイレの掃除は!」と言ったのです。とても驚きでした。すぐに飽きるだろうと思っていたら、「自分がやる!」と便器の中を一所懸命擦っていました。私のやった所を見て、「まだここが汚い!」と怒られることも。(笑)
2時間程度でしたが、征希にはとても大きな経験で、言葉では伝えきれない「何か」を感じ取ってくれたのだと、とてもうれしく感謝しています(泣)。征希の提案により、「幼稚園の休みの日は、自分がトイレ掃除をする日」だそうです。普段できない経験をさせていただき本当に有難うございました。
早朝校内清掃と卒業証書
個人的には、前任校時代の2008年(平成20)4月から「早朝校内清掃」を続けています。12年半、約2600日、出勤日は一日も休まず続けました。多くの生徒が一緒にやってくれました。
前任校で始めたとき、放送部部長の女子生徒が、私の姿に何かを感じたのか、取材に来ました。彼女は、私の早朝清掃を昼休みの校内放送風にアレンジして、NHK全国高等学校放送コンクール静岡県大会に出場し、見事第13位に入賞しました。
現在の勤務校は10年目ですが、着任当初から自主的に私を手伝ってくれる生徒が毎年出ています。今は、曜日ごとに運動部中心の部活動単位で活動してくれ、一人の頃は45分かかっていた掃除が、20分で終わります。朝から清々しく学校生活が始められます。
来校者から「校舎内がきれいだ」との言葉を度々頂きます。職員室から教室へ行く途中の、階段の隅のごみや髪の毛を拾いながら歩いていると、「先生、ごみを下さい」と言って手を差し伸べる生徒もいます。私は、「ありがとう。君も偉いが、そんなあなたを育てたお母さんはもっと偉い。お母さんに会ってみたいな」と話しています。
毎年卒業式の前日に、清掃を続けてくれた生徒へ、感謝の気持ちを込めて、相談役の本と「早朝掃除卒業証書」の授与式を行います。これからも世のため人のために有為な人材として活躍してほしいと願いつつ…。
(つづく)