コロナ禍での社会貢献活動 「ひとり掃除」の取り組み
神奈川県 川野 士郎
危機的経営状態にあった会社が、「掃除」をして立ち直った話は多くあります。それは、個人が掃除で「自分磨き」をするのと同じことが、会社で起きているものと思われます。お店から大企業まで、こういった会社の取り組みを取り上げるコーナーです。
「清風掃々」第37号「ひとり掃除の喜び」に出た川野士郎さんの職場の活動の例です。始めたばかりですが、コロナ禍での掃除の取り組みとして参考になると思います。(株)リコーの生産部門に所属する川野さんに聞きました。
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どんな提案をしたのですか
コロナ禍で、多人数による活動が難しくなりました。在宅勤務が増えるなか、私は1人で行う公共の場の清掃を考えました。職場で提案し10人の仲間に賛同いただき、部署長の承認を経て、昨年11月から始めました。それ以前は、自宅周辺を掃除する個人活動は、リコーグループ(以下「リコー」)の活動としては認められていませんでしたが、組織で呼びかけ、それに対応して行う活動は、会社の活動として認められることになりました。
具体的にどのようなものですか
事業所周辺の清掃や地域でのひとり掃除活動を、「地域美化活動」として会社に登録しました。職場では、事業所周辺を昼休みの20分程度ゴミ拾いなどの清掃活動をしています。さらにそのうちの2名は、地域での一人掃除を行っています。
ひとり掃除の内容は、道路などのごみ拾い、草取り、落葉掃き、植栽の剪定、路上の砂利、側溝の泥やごみの除去などです。
この結果、①地域の人々の心の荒みをなくすことや治安維持 ②ポリ袋などのプラスチックを生き物が食べて死ぬことを防止する生物多様性保全に貢献することを期待しています。貢献するSDGsの目標は、11「住み続けられるまちづくりを」です。
大企業でこのような活動を始めるには、いろいろとあったのでは
昨年リコーは「第2回日経SDGs経営大賞」を頂くことができました。会社に「社会貢献活動に理解がある」ということは大きいです。また、生産部門が大切にしている活動項目の一つに「5Sの徹底」があり、物のおき方から清掃や身だしなみまで、最適な職場環境をつくる必要性が、社内で教育されています。そうした土壌があったので、職場や上司の理解を得ることはまったく難しいものではありませんでした。
活動を今後どう進めたいですか
「社会貢献活動を求められても、コロナ禍で在宅勤務が多く、活動が難しい」といった社員の声が多くありました。そこで、「組織で呼びかけ、毎朝自宅周辺を清掃しては」と提案できるようになったことは、非常にありがたいです。
今後リコーの生産拠点にこの「ひとり掃除」の取り組みをお伝えし、そこで展開してもらって、そこが「きれいで暮らしやすい、快適な地域」として注目され、さらにこの活動が他の企業にも広がってほしいと願っております。
これを実践することで個人が変わり、組織が変わり、社会が変わる小さなきっかけになればうれしいです。
【資料】 リコーと社会貢献活動
売上高1兆6,820億円、従業員81,184人(21年3月期)。1936年実業家市村清が創業、「人を愛し、国を愛し、勤めを愛す」という「三愛精神」は有名。環境経営に力を入れ、社会貢献活動に熱心で、昨年「第2回日経SDGs経営大賞」を受賞。社内の〝意志と責任〟を持った社会貢献活動には、世界の事業所からの815件が登録され、社員25、888人が参加する。
(215-0007 川崎市麻生区向原2-26-7-706)