ちょっと変わった自動車教習所
Mランド丹波ささ山校
社長 井階 正義
今年設立60周年を迎えた「Mランド丹波ささ山校」。「M」は、マインドデザインスクール(心を創る学校)です。
従業員60名、卒業生年間2千名弱(過去最大)、の約半分が県外。滞在型自動車教習所です。井階社長に話を聞きました。
(取材・大西由香)
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安売り競争の中にある教習所業界の中、私たちは運転知識・技術に加え、楽しみながら人として大事なことを学べる教習所をめざしています。ルールはただ一つ、「挨拶」をすること。そしてボランティア活動を奨励しており、これらのことで、20歳前後の若者が2週間の合宿で「変わる」のです。
ささ山校の経過
1962年創業、当初の生徒数は年間600人前後で苦しく、経営者も2回交代しましたが、経営は好転しませんでした。
2005年、友好的M&Aで島根県の㈱益田ドライビングスクール(MDS)の姉妹校になり、同じサービスをするようになりました。
MDSの故小河二郎会長のお話は、当時の私たちにとっては衝撃の内容でカルチャーショックでした。
職員には、「自己中心から他者中心になる」、「喜びをわかち合い、感謝の気持ちを持つ経営だ」という前向きな感想もあった一方、「挨拶と掃除とハガキでお客は増えるのか?」などの懐疑的な反応もありました。この考え方についていけないと思った、職員20名のうち、4、5人が離職しました。
小河二郎会長の考え方
会長は、「やわらぎの心」を経営理念の中心に据えられました。人間は生まれながらにして知恵や良い心、すなわち「良知」を持っています。ドライバーとして、人間として、本来持つべき大事な素直な心を身につけてほしいということです。
「自主」、「自立」した日本人を育てたいと、「共生」より「共創」という厳しい考えもお持ちでした。
会長は、怖いイメージのある教習所は、学校ではなくサービス業だという考え方から、教官をインストラクター、生徒はゲストと、呼び名から変えられました。また、木の持つエネルギーと人間の自然(じねん)が育つとして、教習所ではタブーとされていた植樹もされました。
インストラクターの人間力向上
同年、Mランドの将来はインストラクターにかかるとの認識で、職員全員が益田校に1泊研修に行きました。礼儀礼節、大きな声での挨拶、教習のあり方、掃除などをしっかり学びました。職員の士気は一気に高まり、大きく変わるきっかけになりました。その後も、毎月インストラクターのレベルアップを図る指導を受け、会長からは「挨拶をしなさい、掃除をしなさい、手紙を書きなさい」などと、徹底的に叩き込まれました。
2014年からは、㈱「そうじの力」の小早祥一郎先生の指導により、全員で徹底した掃除を始めました。60周年の今年5月、名称を「朝活」と改め、新体制としました。壁紙を自分たちで張り替えるなど、新リーダーたちが新鮮な視点で取り組んでいます。
若者が変わる
Mランドのルール「挨拶」。人に会ったら必ず挨拶をします。2週間毎日挨拶すると慣れて、しかも笑顔でできるようになると、校内の雰囲気は良くなります。卒業してもこの習慣が続くようです。
ボランティア活動には、いろいろなメニューがあります。
まず清掃です。トイレ、教習車、校内、近隣などがありますが、人気が高いのはトイレ掃除(写真)です。ポイントが高く「一度体験してみよう」という人も少なくないようです。最初はこわごわ便器に向かっても、終われば「心の弱さなど、ちっぽけなもの」と感想を話す人もいます。
「ありがとうカード」は、何かしてもらった人に、感謝の気持ちをカードで伝えるものです。
これらのボランティア活動をすると、ランド内通貨の「ポイント」がもらえます。カフェでの飲食や丹波篠山のお土産などで使えます。本来ランド内ではお金は不要なので、このポイント集めのため、多くの人が楽しくボランティア活動に参加しています。
地域貢献活動
秋の「Mランドフェスタ」(近年コロナ禍で中止)は、これまで13回開催しました。「篠山の街を千人で大そうじ」などの清掃活動、屋台、ライブコンサートなどに、地元の方々や団体、卒業生などが集まります。これらは手づくりのイベントで、企画から準備、当日の資材搬入、後始末まで、すべて社員が自分たちでやることで、人間的にも大きく成長する場です。
挨拶が飛び交い笑顔が増え、インストラクターとゲストが学び合って、教習所内の雰囲気が変わっていきました。ゲストも増えてきて、「人として成長できる教習所」へと変わっていっているように思います。
(669-2436兵庫県丹波篠山市池上569)
(初めての方へ)SDGs「持続可能な開発目標」
「経済発展しつつ、環境配慮をし、社会生活と調和させよう」
という趣旨で、「健康・福祉」「安全な水と衛生」「生産と消費」など
17の目標ほかが、2015年国連総会で採択されました。
日本でも、行政や企業はもちろん、学校では子どもたちも教えられており、
誰もが関心を持って、学び実践していくことだと思います。
最近、SDGsのマーク(上)入りバッジをつけた人を見かけるようになりました。