第二回関西若手交流会掃除道の原点を求めて
京都掃除に学ぶ会 時政 和輝
朴の森・鍵山記念館に集う
10月22、23日、山口県の「朴の森」にて、掃除活動をする20、30代の関西若手メンバーを中心に、研修会を開催。メンバーの親睦と、それぞれの活動の〝在り方〟を深めることが目的です。
鍵山相談役を知らない世代に、「お掃除を通して社会のすさみをなくしたい」という相談役の思いを後世につないでいくには、若者が集い、掃除道を体現している先輩方から学ぶ場が必要だと考えます。経験が浅い若者だからこそ、地域や掃除の仕方などのこだわりにとらわれず、純粋に心を磨き高め合えると思います。
第一回は2021年11月
大阪の西梅田公園で、28年以上毎日、新大阪駅前のお掃除を続けている山本健治氏に、「掃除〝に〟学ぶ」をテーマにお話しいただきました。今回は、相談役の一番近くで学んでこられた鍵山幸一郎氏に講師をお願いして、相談役の生き方・考え方を学びました。
二日間の主な活動
〇鍵山幸一郎氏による講話
鍵山掃除道の原点『思いやる心』
〇掃除実習(トイレ掃除、草抜き)
〇朴の森施設の見学
〇参加者によるディスカッション
鍵山氏の講話では、相談役の人への思いやりや細やかな気遣いを学びました。周囲の目を気にせず横柄で自己中心的な行動を取る日本人が増えたことを問題視され、少人数でもいいから「人を思いやる心」を育んでほしいと力説されました。誰でも取り組める具体的実践として、荷物が届いたときエレベーターの前で受け取ることや、配達の方にささやかなお菓子をお渡しする、レストランでは長居をせず食事が済んだら次の方に譲るなど、教えていただきました。「思いやり」という言葉で終わらせずに、具体的に実践することだと考え方を学びました。
掃除〝に〟学ぶ
掃除実習では、掃除の仕方ではなく、掃除〝に〟学ぶような伝え方や、進め方の工夫を学びました。単に汚れを落とすだけでなく、その掃除で場や空気がどのように変わっていくのか、気づきを促すことが大切だと教わりました。
私が一番心に残ったのは、「掃除は自分がするのではなく、道具に働いてもらうこと」です。「自分がきれいにする!」と力んで、かえって便器や道具を傷つけていたことを反省しました。
朴の森には、鍵山記念館の他に、耕心の里、元氣の里、一隅の里、朴の道などの施設が併設されています。どの施設も相談役の思いに寄り添い、〝どう在る〟ことが地元の方や後世のためになるかと考えた工夫が施されています。
参加者の感想
○リーダーとして、お掃除にどのように向き合えばよいかを考える貴重な機会になりました。お茶のペットボトルに名前のシールを貼っていただくなど、些細な工夫に思いやりの心を感じました。私は、今回の学びを新洗組に活かし、みんなにとって心地よい活動になるよう、創意工夫していきたい。(京都新洗組隊長・谷口貴司)
○「衝撃」。一泊二日の研修は、これ以外の言葉が思いつきません。それくらい私の当たり前を変えてくれた、実りある研修でした。中でも、これから社会人になる私に特に必要だと思ったのが「思いやり」です。私の常識不足、いたらなさに気づかされました。(同副隊長・村尾海成)
(600-8361京都府京都市下京区堀之上町531-303)
校長レポート 心を耕すトイレ掃除
長崎県 川口 貴晴
佐世保市は、学校トイレ掃除を行政が後押ししています。2002年、「佐世保明るい社会づくり運動推進協議会」(明社協)が市制百周年記念事業として学校トイレ掃除を開催し、鍵山相談役ら1500名が参加しました。11回継続後休止。
しかし、明社協会長の朝長則男佐世保市長は相談役との掃除が忘れられず、2020年に5年ぶりに活動再開、今回に繋がります。
■と き 2021年11月8日
■ところ 佐世保市立吉井中学校
■参 加 計90名(内生徒58)
生徒の感想
〇身の回りをきれいにすると、細かいことに気付くようになると感じました。小さな汚れもきれいにしたら、心も磨かれている感覚になりました。
○最初は嫌だったけど、だんだん汚れが落ちてきて楽しくなりました。素手では汚いと思ったけど、結局素手で洗いました。終わった後、本当に心がすっきりして自分でもびっくりしました。今後心を込めて掃除をしようと思いました。
川口校長(当時)に聞きました。
*
今回の活動のきっかけは?
吉井中学校の校訓は「耕心」です。自ら努力して心を耕し、心を豊かにし、心を磨き、社会を支える存在になってほしい。校長在籍の2年間、「耕心」を実現する核として「本物に学ぶ」をすえました。ICTが発達した現代、コロナ禍の今こそ、「本物」に触れ、体験から得られるものは多いと思います。
そのような機会を企画してきましたが、生徒のよさや可能性をより引き出す手立てはないかと思いを巡らせていたときに、明社協から「トイレ掃除体験」募集の話が舞い込んできました。
誰もが嫌がるトイレ掃除こそ、感謝や奉仕の心、困難に向かうたくましさを育てると考えました。
私は若いころ、鍵山秀三郎さんの「徹底的な掃除が人を変え、会社を変え、学校を変え、世の中を変える」との言葉に出逢い、トイレ掃除を生徒とやってきましたが、いつか学校全体でやりたいと思っていたのです。このたび実現できたのは、吉井中教職員、日本を美しくする会の皆様、明社協のご理解とご助力のおかげです。
今回実施してどうでしたか
期待したとおり、「トイレ掃除体験」の意義は大きく、参加した2年生のみならず他学年にも良い影響を与え、さらに教職員の考え方にも大きくプラスしたと実感しています。
最初は「嫌だなあ」と思っていた生徒も、黙々と取り組み、ついには素手で便器や床を磨き上げていました。あっという間の2時間で、最後には「やってよかった」「すっきりした」という声がたくさん聞こえてきました。参加した生徒は感謝、奉仕の心や自分の生き方などについて考えを深めたと思います。
学校全体に環境美化意識・規範意識が高まり、いじめや問題行動・トラブルの防止、教職員の資質向上にも大いに寄与し、素敵な学校になったと自負しています。
佐世保市青少年教育センター所長に就任(2022年)されました
これまでの教職32年間、「とにかくやってみる」「誰かがやらなければ自分がやる」の信念で、生徒と向き合ってきました。その中でわかったことが、「本物に勝る学びはない」です。「本物」は必ず何かを生徒に伝え、感じさせ、生徒は考え、自ら動き出し、その成長の土台となってきたと確信します。
現職は、不登校など友人・学校・家庭などで悩みのある児童生徒の支援が主な用務です。学校や社会に対して少し距離のある彼らに、「本物」に出会う機会を積極的に企図し、「心を耕し」、彼らの学校復帰や社会的自立につなげたいと、決意を新たにしています。