さて、今回のお題は「虫」でした。本欄は文芸川柳ですから、詩情(ポエジー)が大切。したがって「無視」等の言葉遊び(ダジャレ)や「水虫」「腹の虫」等は、相当の佳句でない限りいただけません。ただし、胸の痛みなどの比喩として心に巣食う虫等の表現ならば、実在の虫でなくともOKです。
川柳ワンポイントアドバイス
「デフォルメ(誇張)する」
△落ち葉掃きミミズ沢山ほっとする
(東京都/川野士郎)
掃いた落ち葉の下からミミズがいっぱい出てきて、こんな街にもまだ自然が残っていた、と士郎さんは安堵されたのでしょうね。この17音字に作者の人柄が感じられます。またこれは今ここに確かにある作者の命とミミズの命の呼応の瞬間とも言えます。
作品としては中七「ミミズ沢山」のままだと説明的なので、ここはそのミミズの命の有り様を誇張して詠んでみてはいかがでしょう。
○添削句
落ち葉掃きミミズのダンスほっとする
*お題「虫」入選作
大空に希望を抱いたアゲハチョウ
(大阪市/伊藤惠子)
秋来る姿見せずに告げる声
(松戸市/佐藤誠)
ベランダのコオロギ命を燃やして
(大阪市/池永重彦)
掃除あと虫も落ち着くマイホーム
(東京都/池田啓一郎)
クワガタの艶が増します展示会
(京都市/平里彩)
妹は蝶を追いかけ帰らない
(大阪市/川端日出夫)
コオロギの哀しい調べ聞かぬふり
(泉佐野市/古谷りり)
残さずに食べて立派な蛾になって
(大阪市/中川拓真)
カメムシが土に還って雪積もる
(草津市/宇野弘子)
45号お題「空」(3/31締切)
46号お題「母」(6/15締切)
s.f777.ikenaga@gmail.comまで。
ご一緒にLet’s川柳
中川千都子 心理カウンセラー、川柳作家。故時実新子直弟子。現代川柳研究会会員。著書『石の名前』(左右社)、川柳専門誌『現代川柳』編集長