SDGsと経営

ゴミに情熱を燃やすお笑い芸人

東京都 滝沢 秀一

 1998年、お笑いコンビ「マシンガンズ」結成。36歳でゴミ清掃員を兼業。著書15冊出版。
 2020年環境省「サステナビリティ広報大使」、ごみ・環境問題の取り組みを広める役割を担う。
 2022年、「滝沢ごみクラブ」を発足させた。このクラブを主体に、5月3日~30日全国の拠点でさまざまなイベントをおこなう「ごみフェス2023」を実施。滝沢秀一さん(46)です。
 『このゴミは収集できません』
角川文庫(2022)から 


 テレビに出たり漫才をしたが、やがて極貧になった。芸能生活のほとんどが、売れていない状態でした。2012年36歳のとき子どもができ、出産費用40万円。バイトを探すが、どこも35歳まで。年齢不問とあるページに電話をかけたが、9社すべて断られました。目の前が真っ暗になりました。芸人仲間に相談してもだめ。そして、仲の良かった元芸人に電話をかけました。ゴミ清掃員をしていました。ゴミ清掃との出会いです。

ゴミ出し放題の日本
 毎日よくもまあ大量のゴミが排出されるし、しかもまだ使えるものがごろごろ出ます。「食べ残し」が手つかずのまま捨てられています! この国は物であふれ返っています。異常です。
 ゴミは、清掃車が清掃工場に持っていき、燃やされ、灰が残ります。この灰は最終処分場に埋められますが、これが厄介なのです。
 環境省のホームページに明記されています。「最終処分場の残りの寿命が、あと22年」。僕はゴミ清掃員になるまで、考えたこともありませんでした。
 日本のゴミ焼却炉は1056基。365日、24時間ゴミを燃やし続けています。燃やさないと日本はゴミで埋まるのです。東京でいえば、これ以上埋め立てを増やすと、東京港が貿易港として成り立たなくなるそうです。どの県も住民の反対などで、処分場を確保するのがとても難しくなっています。誰でも自分の家の隣りが処分場になると嫌でしょう。

灰から小石をつくる 
 僕が子どものころは、プラスチックは燃えないゴミでした。燃やすと有害なガスが出たからです。その後焼却技術が向上し、燃えるゴミに出せるようになりました。焼却により、ゴミは元の大きさの20分の1の灰になります。埋め立ては基本、不燃ごみを粉砕したものと、可燃ゴミを焼却した灰で埋め立てられます。不燃ごみは細かく砕いて鉄やアルミなどの資源をとり除き、残りを仕方なく埋め立てます。
 研究の結果、灰を小石にする「スラグ化」に成功しました。これで元の大きさの40分の1になりました。これを、アスファルトや建設用コンクリートに混ぜて再利用します。しかし、リサイクルにはとてもお金とエネルギーがかかるので、別の問題も出ます。

安物買いの即捨て習慣
 10年前居酒屋に勤めていました。泥酔したお客は無茶苦茶な注文をし、箸をつけないまま残し、バカ騒ぎをして帰っていきました。みなゴミ箱行き。店はもうかるが、僕は帰る間際は注文しないで、テーブルのものを食べればいいのにと思いました。こういうことが全国の居酒屋で、きっと今も毎日続いています。回転すし屋や、ハンバーガー屋さん、コンビニなどでも、まだ食べられる大量の食べ物が捨てられています。
 安いものを買って、すぐ捨てる習慣が根付いています。洋服におもちゃ、百円ショップの数々の品物など。安いから余計なものまで買う、もしくは安いから大切に扱っていないのではないでしょうか。
 そして過剰包装です。お土産にもらった羊羹は、紙袋、包装紙、箱、そして一つひとつのビニール包装と、4つの包装を取って、ようやく羊羹が出てきます。
 そして多くの人は、税金を払っているのだからと、何でもゴミに出します。税金はゴミ清掃の人件費にも使われますが、多くのお金は、ゴミを捨てた後の処理にかかっていることはあまり知られていません。埋め立て地に降る雨は、ゴミを通して汚水になり、その汚水を処理施設で処理します。東京の場合、この汚水処理に年間25億円かかるそうです。

私たちにできること
 まず、きちんと分別して出すことです。缶は缶、ビンはビンに出して、不燃ゴミに出さない。ペットボトルは、できるだけキャップをとり、ラベルをはがして資源ゴミに出す。段ボールは、ビニールなどははがす。ノートやカレンダー、包装紙などは、燃えるゴミに出さず、「雑がみ」として古紙リサイクルに出すことです。気持ち一つで、ゴミにもなり、資源にもなり、真反対の結果になります。ゴミを分けるだけで社会に貢献します。
 2つ目。本当に必要なものだけ買うこと。買う前にもう一度必要かどうか考えましょう。そして買ったら、大事に使うことです。
 以前は、消費する時代でした。僕らの時代は、買うときに捨てるときのことを考える時代にしませんか。後の世代のことを考える世代にしませんか。簡単なことでよいのです。お店のお手拭き一つも、必要なければ断るのです。大事なことは、「本当に必要か?」と考えることだと思います。
 3つ目。生ごみの水分はなるべく切る。生ごみの80%は水分。水分が多いと燃やすエネルギーが必要です。このエネルギーは税金です。生ゴミを一絞りギューッと絞れば、むだな税金を使わず、余計なCO2は排出されません。
 「買いすぎない」「作りすぎない」「食べ残さない」ことです。

【資料】 滝沢ごみクラブ
 「マシンガンズ滝沢」と一緒に、ごみを減らすためのクラブ活動! ごみを減らしたい、子どもたちに綺麗な地球を残したい、地球にも人間にも優しい生き方をしたい仲間がつながって、楽しくごみやエコ、SDGsを学び実践するコミュニティ。現在全国約百名登録。