SDGsと経営

小さな元気な会社

高田舗装 代表取締役 高田 勝敏

2022年度「日本でいちばん大切にしたい会社」大賞の審査員会特別賞を受賞。土木・舗装業では極めてまれ。苦節25年、金沢の小さな赤字会社を再生させた、高田社長(68)に聞きました。

高田社長(中央)と昌宏専務(右)

1997年(平成9)、42歳で2代目となるも、景気が悪く同業者はバタバタ倒産していき、何度も「やめようか」と思いました。

2004年月刊『致知』の、若者が「新宿西口をきれいにしませんか」というプラカードを持って歩く記事を見て感銘を受けました。鍵山相談役のことも載っていました。

2006年金沢掃除に学ぶ会に参加した際に、市山勉代表世話人から、掃除を徹底しているタニサケを紹介されました。

他社に学ぶ

2007年、タニサケ訪問。原田隆史先生の目標設定の研修受講。2010年、伊那食品訪問。

 タニサケの松岡浩社長からは、「会社は社長のためにあるんじゃない。社員が元気なら、社長も元気になるやろが」など。伊那食品では、「良いからと会社を大きくするな。10年後20年後に社員が元気に働ける会社をつくれ」など、経営者の姿勢をビシビシ厳しく指導されました。

2011年日本を美しくする会田中義人会長の東海神栄電子工業訪問、徹底した整理整頓や掃除に感動しました。その後も会社を紹介されては訪問しました。

会宝産業(石川)、喜多ハウジング(金沢)、日本植生(島根)、沢根スプリング(浜松)、清川メッキ(福井)、明光建商(福井)などなど。どの会社もすばらしく、すべてがよい勉強になりました。

見学させていただいた会社の皆さまに深く感謝しています。

まず自分が学ぶ

年間50~100冊、夜を徹して読みました。心に残った本を挙げます。

月刊『致知』をはじめとして、『やればできるんよ』(山廣康子)、『成功の教科書』(原田隆史)、『ゴキブリだんごの秘密』(松岡浩)、『年輪経営』(塚越寛)、『修身教授録』(森信三)、『二宮翁夜話』(二宮尊徳)、『論語と算盤』(渋沢栄一)、『学問のすすめ』(福沢諭吉)、『山岡鉄舟修養訓』(平井正修)、『山田方谷の言葉50』、『現代語古事記』(竹田恒泰)、『いい会社のつくり方』(坂本光司)、『トマトとメロン』(相田みつを)、『永遠のゼロ』(百田尚樹)、『京セラフィロソフィ』(稲森和夫)…。

社員教育と改革  

学んだことを経営に活かそうとしました。2006年、目標設定開始。私を含め、毎年目標シートを書き、毎月−毎日チェックリストに結果を書き入れます。2018年、朝礼時に月刊『致知』の輪読、2011年『こども論語塾』(安岡定子)の輪読を始めました。

 2014年、私は社員のロッカールームや靴箱の靴の、乱雑な状態を毎日直し始めました。しかしやってもやっても、状態が変わらないので、やかましく言うこともありました。私が毎日やっていると、社員は「しゃあないなあ、やるか」と思ったのか、少しずつ整頓するようになりました。

 20年前から、始業前に会社前の清掃をしていましたが、2014年ころから協力してくれる社員も出てきて、今では多くの社員がやってくれます。土建業はふつう嫌がられるものですが、「冬は除雪もしてくれる」などと、地域の当社を見る目も変わってきたようです。  

どんな組織でも、本気でやる人は1〜2割、反対の人が2割、残り6割はどちらでもない人です。続けていると、この6割は協力してくれるようになるので、「継続」することですね。

社員のモチベーション向上  

日本の歴史を勉強するために、2014年靖国神社遊就館、2015年知覧特攻平和会館(鹿児島)を社員研修で訪問しました。マスコミには出ない歴史を知り、感銘を受けました。

そして映画鑑賞。2014年、社員は『永遠のゼロ』を見て、気合が入ったようでした。2017年『海賊と呼ばれた男』も見ました。やる気が続いたのは、3日くらいでしたがね(笑)。社員が元気を出すよういろいろ考えました。  

2013年、「ハイわかりました」「ありがとうございます」「お疲れさま」の発声練習を開始。毎日くり返していると、習慣になります。

助け合いの風土つくり

 当社は、毎日2~3件どこかで作業をしています。5㎞圏内の仕事の受注に力を入れ、そしてどこかが早く終われば、15分で他所に駆けつけ応援できる体制にしました。効率は上がり、残業は減ります。給与面も、能力給より、全員が生活に不安のない給与を与えるようにしました。その方が、社員同士が助け合う風土ができるからです。

障害者雇用

『日本でいちばん大切にしたい会社』第1巻にある、社員の7割が障害者の日本理化学工業。そこの障害者は「私の幸せは働くことです」と。…ブウブウ言いながら働いている私たちは想像もしない声に、ぐさりと来ました。  

当社は、知的障害者を1名、18歳から現在52歳まで34年間雇用していますが、自立できるようにと年収は300万円を超えるようにしました。

「石の上にも三年」

「100年カレンダー」を玄関に貼っています。自分の命日も入るので、人生が俯瞰できますし、何かを始めた日を記入し、その継続日数を記録しています。  

2023年6月末時点で、『こども論語塾』の輪読は5702日、挨拶の発声練習は2792日、会議の前に読む「教育勅語」は312回続けています。1000日やれば、習慣になります。

「論語」と「算盤」

(売上と利益推移のグラフ参照)  

以前は赤字体質でしたが、2012年から上向き、この10年は安定しています。  

以前は、業界の下請けが売り上げの半分を占めていました。受注変動が大きく利益率も低いので、これをすべてエンドユーザーからの受注に切り替えました。

60社程度だった顧客は、150社に増えました。取引先への支払いは、手形から現金に変えました。

財務体質がよくなり、社員の待遇改善に努めています。年間休日は、105日を117日に増やし、給与は公務員給与水準、退職金は最低800万円、状況により上乗せして1千万円が目標です。  

社員が嫌々でもついてきてくれたのは、報酬や休日増加などがともなったからで、考え方だけでは難しかったと思います。論語と算盤の両面が必要と思います。

「日本でいちばん大切にしたい会社」の応募

 2016年に応募した動機は、自社がどのくらい悪いのか知りたかったからです。審査員が訪問されて指導を受け、それらを一つずつ実行していき、一次審査に7回パスし、2022年にやっと審査員会特別賞を受賞しました。しかしまだまだで、立派な会社にしたいとやっているところです。

【資料】 「日本でいちばん 大切にしたい会社」大賞

2010年から法政大学などが主催。応募資格は、6項目に該当すること。

①リストラをしていない 。

②重大労働災害を発生させていない。

③一方的取引きを強要していない。

④障害者は法定雇用率以上。

⑤黒字で納税責任を果たしている 。

⑥法令違反がない。

従業員や外注・仕入先など、「人を大切にする経営」を目指す会社を増やしたいとスタート。  『日本でいちばん大切にしたい会社』は、あさ出版の刊行書籍。