今号のお題は「手」。この同じ題から詠み手により、さまざまな世界が広がります。十七音字のドラマをお楽しみください
川柳ワンポイントアドバイス
「中七音を守る」
△手を振ってちょっぴりさみしいさようなら (大阪市/池永重彦)
明るく手を振るも胸キュンの一瞬。共感を呼ぶ句です。惜しむらくは中七音が八音となりリズムが崩れている点です。
○添削句
手を振ってちょっとさみしいさようなら
中七以降のひらかな表記のそこはかとない「さみしい」感がいいです。
*お題「手」入選作
どくだみが香る手袋部屋の中
(東京都/川野士郎)
・五感を刺激する句。働いた手袋のこの存在感たるや。情景が浮かびます。
つなぐ手があったかいなあ そうだった
(みどり市/佐藤誠)
・話し言葉と一字あけが効果的。手の温もりに心も温まりますね。
動かぬ手口で書いてる夢の文字
(徳島市/藤村良枝)
・良枝さんは書道の先生。手の使えない生徒さんが口で筆を執って書いた「夢」の文字にどれほど豊かな力が溢れたことか、伝わってくるようです。
手を挙げて道路渡って新学期
(高槻市/岡本悠)
手が触れるそろそろ好きになりますよ
(京都市/平 里彩)
私の手母の手を引く孫の手も
(高松市/杉本千春)
叱られて涙を拭いた小さな手
(大阪市/伊藤惠子)
手のひらに我慢と書いて仰ぐ空
(宝塚市/巽郁子)
反対と叫ぶ前から手を上げる
(大阪市/川端日出夫)
オテの手のかすかな重み握りしめ
(泉佐野市/古谷りり)
節のある手が雄弁に語り出す
(草津市/宇野弘子)
48号お題「酔う」(12/15締切)
49号お題「難しい」(3/15締切)
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ご一緒にLet’s川柳!
中川千都子(なかがわちづこ)
心理カウンセラー、川柳作家。
川柳専門誌『現代川柳』編集長