SDGsと経営

パッケージフリーの量り売りのお店
 ゼロウェイストショップ Violetti

「量り売りで、使い捨てのごみとむだを減らします。人と社会と地球にやさしい製品を揃えています。使い捨てない、マイ容器をお持ちください」
 梶原栄二さんと美樹さん夫妻経営、持参の容器に「必要な分だけ」「食べるだけ」買って「ゴミを出さない」環境にやさしい生活スタイルをしたいお客様相手のお店です。ご夫妻に聞きました (取材 編集室)


出店のいきさつ
 福岡でサラリーマンだった栄二さん、2017年一家で東京に転居しました。2020年ころ在宅が多くなり、包装ゴミなどが多く出ることに問題意識を持ちました。
 美樹さんは、子どもが小さい頃から食べ物に関心があり、できるだけ体によいものを選んできましたが、このゴミ問題から地球環境のことも考えるようになり、ごみを出さない「ゼロウェイストショップ開業講座」受講。2021年、2人は練馬区に店をオープンしました。
 ここで助けられたのは、「斗々屋」(日本初のゼロ・ウェイストなスーパーマーケット、「斗々屋」HP)でした。講座だけでなく仕入れもできました。始めは売れ筋や量がわかりません。開業半年は、売れた分だけ支払う委託販売でしたので、とても助かりました。
 もっと地域に根ざしたお店を目指すために近隣に移転。栄二さんは、床や棚、机は廃材などで工作し、壁は近所の子どもたちと一緒に漆喰を塗り、できるだけDIYで創り上げました。

商品と仕入れ
 食品は、ナッツやドライフルーツ、パスタなど。調味料は、油、みそ、しょう油、梅干しなど。洗剤、プラスチックフリーの竹歯ブラシ、蜜蝋ラップなどの雑貨も置いています。
 パッケージフリー(無包装)での販売なので、お店での保存容器は品質を保つ密封性が大事です。
 また「個包装」を減らしても、生産現場や店舗のバックヤードで多くのゴミを出しては意味がありません。仕入れ先との運搬は、再利用できる段ボールや「通袋」を使うこともあります。精華堂さん(『清風掃々』47)は、再利用できる段ボールで送ってきます。精華堂の自然米のあられはファンが多く、うちを“おせんべい屋さん”と呼ぶ子どももいます。
 近年は小ロットでも卸してくれるところがあり、個人店としては、商売がやりやすくなりました。


買い方は簡単
 ①計量器(写真)で容器の重さを計る ②容器に商品を入れる ③再度計量器に載せ、「商品番号」を入れると、価格が表示されたラベルが出てきます。

お客様の反応
○お客様は近所の人が主で、常連になってくれる方が多いです。
○初めての人が来られて、お店のコンセプトを知り、商品やゴミ問題について話しながら、買物をしてもらうのも楽しみです。
○商売を始めたころ、何も知らないお客様が、「何で、袋も用意してないの」と不満を言われたりしました。またドラッグストアでビニール袋を買って来る人もいますが、これはゴミの減量に反します。(笑)
○マイボトルで買いに来るお客様で、使い捨て容器のしょう油はもう買わないという人もいます。


私たちの目標と夢
 2階を「まちの公民館 Koti(コティ)」として、演奏会、ワークショップなどを開催しています。地域の人が気楽に集まり、環境やゴミ問題を一緒に考える場にしたいです。
 また、ゴミを減らすことに情熱を燃やすお笑い芸人、滝沢秀一さん主催の「滝沢ごみクラブ」のお世話もしています。昨年始めた「ごみフェス」は、今年も5月3日~30日におこないますので、全国の人々に参加してほしいです。
(176-0003東京都練馬区羽沢2-1-7)

「スポGOMI」ワールドカップ

−海洋ゴミ削減を目指して−


 ゴミ拾いとスポーツを掛け合わせた日本発祥の競技「スポGOMI」。
 「海洋ゴミ削減」を目的とし、会場は街路や公園などの公共施設を使う。このたび、初の世界大会が開かれ、予選を勝ち抜いた米国、インド、ブラジルなど21カ国のチームが東京渋谷で競った。結果は、優勝英国、2位日本(新潟県「スマイルストーリー」)、3位イタリアだった。
 私たちの仲間の「ドイツをキレイにする会」の2名が同行来日。
(上の写真 「スポGOMI」のHPより)
(取材 編集室)

ルール
 3人でチームを組み、指定されたエリア内で45分間ゴミを拾い(分別に別途20分)、昼食を挟み2ラウンド。ごみの量(重さ)と、種類に応じて与えられるポイントを競う。
選手宣誓
 「私たちはすべての選手の名において、海洋ゴミ問題が世界的に深刻化するなか、次世代に豊かな海を引き継ぐことをめざし、陸から海に流れ出すゴミを少しでも減らすために、フェアプレーの精神にのっとって参加することを誓います」
運営・解説
 各チームに審査員とレポーター、カメラがつき、本部に実況中継し、大スクリーンの画面や分別についてコメントしていた。「滝沢ごみクラブ」の滝沢秀一さんが解説者。
ドイツチームについて
 デュッセルドルフ北東、車で約20分のハム市のチーム「Dreck Weg Sammler」(道路ごみ収集の意)。メンバーは、Charlotte Schmitzさん、Lukat親子の3名、「ドイツをキレイにする会」の川崎英一郎さん(64)と岩間靖司さん(33)が同行。ドイツ在住は、川崎さんが44年、岩間さんが2年。
 チームの活動は、2015年Schmitzさんが、地元で落ちているゴミに我慢できずにゴミ拾いを始め、翌年Lukat親子が賛同して参加し、今は20人くらいという。

(左から)岩間、川崎、Schmitz、Lukat(娘)、Lukat(母)


感想
 日本では、皇居、浅草、東京スカイツリーなどを見学したが、「ゴミが落ちていない、人が親切、食事が美味しい、電車が時間通り」などの印象を持ったという。
 川崎さんは「盛り上がりが凄かった」「日本はゴミが本当に落ちていない。それでも多くのゴミを集めてきたのに驚いた」「ワールドカップ開催のお陰で、ドイツにもゴミ拾いをする団体が複数あると知った」などの感想を述べました。

【資料】「スポGOMI」について
 企画・日本財団 主催・ソーシャルスポーツイニシアティブ。
 2008年ソーシャルスポーツイニシアティブ考案。2016年日本財団の「海と日本プロジェクト」取り組みの一つとなる。海外でも開催され始める。2019年高校生対象の「スポGOMI甲子園」開始。2023年「スポGOMIワールドカップ」。
 目的は、「海洋ごみの削減」。海に流れ込むプラゴミは、毎年800万トン、海ごみの8割は陸からといわれる。公共施設の美化と参加者の環境意識向上にも役立つ。

(左から)2位日本、優勝英国、3位イタリア

【解説】 SDGs ゴミ問題

目標No.12の「生産と消費」は、端的に言えば「ゴミ問題」であり、「生産・消費したものは、すべてゴミになる」ということです。

ゴミはなぜ問題になるのか
①環境汚染 大気、土壌、水、海洋などの自然環境
②地球温暖化 生産・消費に伴う温室効果ガスの発生
③資源枯渇 石油、鉱物、食料、衣料素材など、すべての資源
④社会問題 途上国での貧困や(児童)労働搾取、埋立地の限界など。
 他にも多くあります。今号掲載2テーマの背景などは以下です。


量り売りのお店
 日本の家庭ごみは2,971万㌧、一人一日918g排出しています(2021年)。うち約半分は容器包装で、家庭から出る最大量のゴミです。
 過去、2006年「改正容器包装リサイクル法」、2020年にレジ袋有料化が実施されてきましたが、店頭には「使い捨て」のパック入り食品や雑貨が多くあります。
 かつて、例えば豆腐は、持参した容器に豆腐屋で入れてもらって持ち帰っていました。ヨーロッパで広がっている量り売りのお店が、日本でも少しずつ増えているようで、これを取り上げました。


スポGOMIワールドカップ
 「海のゴミの8割は陸から」といわれます。山や道端に捨てられたレジ袋やぺットボトルなどが、溝から川、そして海に流れ出します。
 特に、自然界で分解しないプラスチックごみ(廃プラ)が大きな問題です。世界全体で年間800万㌧が海に流れ込んでいるそうです。問題は大きく2つあります。
①海の生き物を殺す
 2015年、鼻にプラストローがつまったウミガメの動画が世界に流れたり、鯨の胃袋から大量のプラスチックが見つかったりして、これらは世界に衝撃を与えました。
 生き物が死んで朽ちれば、プラは再び海を漂い始め、次の生き物を殺します。
②マイクロプラスチック
 海の波で壊れたり紫外線により劣化した廃プラは微細に砕かれ、「マイクロプラスチック」(写真)となって無数に海に漂います。これらは食物連鎖を通じて小型魚から大型魚、そして人間が食べます。これが人体に及ぼす長期的影響はまだ分かっておらず、脅威と考えられています。
 海の汚染は、道端に捨てられたビニール袋や吸殻のフィルターなどによるものなのです。


ゴミ対策
 「3R」が広く知られています。
Reduce(リデュース) 発生を減らす。
Reuse(リユース) 再使用する。
Recyclr(リサイクル) 空缶などを回収、分別し、再び製品をつくる。
 200年『リサイクルしてはいけない』という本が話題になりました。リサイクルには、運搬や加工のエネルギーがかかるために、安易にリサイクルに走らないようにと警告した本でした。

さいたま市HPより

ノーサンキュー Refuse(断る)
 考え方で、行動が違ってきます。たとえば、イベントで配布されるペット飲料。「リサイクル」の姿勢だと、「もらって飲んだ後リサイクル箱」に入れます。しかし「リフューズ」であれば、「もらいません」。
 ストローはそもそも病人用にできたものだそうで、なくても生活に困ることはありません。レジ袋も、マイバッグを持参すれば、年間450億枚も使うことはないでしょう。
 日本は分別の意識は高く、ポイ捨ても少なくて街はきれいですが、一人当たりプラ消費量は、世界第2位だそうです。
ゴミを減らそう
 ゴミ対策は、ゴミを「出さない」「捨てない」「拾う」の3段階。
 この中で、①「出さない」発生源対策が問題の根源だと思います。「消費したものはゴミになる」。自分にできる「ゴミを出さない」を進めたいものです。