今号のお題は「歌」。作品を拝見し、誰しもの人生のそこここに歌があることをあらためて感じました。
川柳ワンポイントアドバイス
「明確にする」
△沁みいるよ家族の記憶八代亜紀 (大阪市/池永重彦)
川柳は17音字のドラマ。この句でも先ごろ他界された八代亜紀さんの固有名詞から広がるイメージがありますよね。ただ「家族」は複数のため思いの対象が曖昧になりやすい。
○添削句
沁みいるよ父との記憶八代亜紀
対象を「父」と明確にすることで、「八代亜紀」との結びつきも想像でき、またおそらくは今もうここにはいない「父」そして「八代亜紀」に時の流れも詠いこまれ、しみじみとした思いになります。
*お題「祝」入選作 15名40句
臨月の歌う私のお腹蹴る
(京都市/平 里彩)
・期待と喜びいっぱいの妊婦さん。歌に幸せが溢れていますね。明るい一句。
はな歌や道ばたの花よけて掃く
(徳島市/藤村良枝)
・「はな歌」から、楽し気にお掃除される様子が立ち上ってきます。
虫の音と子らの寝息が輪唱す
(大阪市/西野真理子)
・虫の音」と「子らの寝息」の重なりを「輪唱」と詠む美しさ。読者の胸にも静かな平和な夜が広がります。
渾身の力で歌う応援歌
(大阪市/川端日出夫)
一枚の譜面の中で生きている
(大阪市/釜田かな湖)
母さんの鼻歌明日もきっと晴れ
(泉佐野市/古谷りり)
子と孫がばあばにうたう子もりうた
(高槻市/岡本 悠)
童歌祖母の背中に沁みる声
(宝塚市/巽 郁子)
落葉散る風の向こうに秋の虫
(東京都/池田啓一郎)
ハミングで遠い記憶に逢いにゆく
(神戸市/吉田わこ)
52号お題「犬」(12/15締切)
53号お題「土」(3/15締切)
s.f777.ikenaga@gmail.comまで。
ご一緒にLet’s川柳!
中川千都子(なかがわちづこ)
心理カウンセラー、川柳作家。
川柳専門誌『現代川柳』編集長